物質の接合界面での新しいスピン機能

[慶應スピントロニクス 研究連携先 - 伊藤・谷山研究室 , 東京工業大学] 伊藤・谷山研究室では、物質の界面での「磁気」と「機能」の開発を念頭に、物質系の組み合わせ、特に磁性体と半導体、強誘電体といった異なる種類の物質同士の接合界面でのスピンに関する物理現象の解明に取り組んでいます。 Q."例えば、磁性体と半導体、もしくは磁性体と強誘電体そういったものの組み合わせで、それを接合した時の境界領域で新しい性質が出てきます。そういった異なる物質と接合した時に出てくる特徴的な性質を有効的に活用することによって、それを利用したスピントロニクスの研究を進めています。" 現在、異なる物質同士の界面では特異な性質が出やすいことが分かっており、現在のコンピュータに使用されているハードディスクの読み取りヘッドなどは、この性質を積極的に使うことによって機能しています。中でも、元々それぞれが特異な性質をもつ磁性体と強誘電体を接合すると、接合界面ではそれぞれの物質が持っている固有の性質とは全く異なる現象が起こるのです。" Q."磁性体の磁化の配向というものは磁性体の格子の歪とか、そういったものに非常に敏感なのです。とういことはある物質とある物質を組み合わせて接合すると、その接合の界面のところに、大きな歪が生じます。その歪が生じるとその磁性体の性質がガラッと変わる場合があります。その大きな磁性体の性質が変化を利用することによって、例えば磁性体中の電気のスピンの方向を制御するといった、そういうことを行っております。" また、伊藤・谷山研究室では、磁性体の内部のスピンの揃った電子を半導体の中に注入する技術も開発し、その際にスピンが半導体の中に入ったことを検出する為に光学的な手法を使って測定をしています。 Q."我々が使っている光測定の装置は、物質が発光を計測する装置です。光というのは右回り円偏光と左回り円偏光というそういった成分を持っています。その成分を分解して計測できるような、そういった装置を使って研究を進めています。又、それとは別に磁性体の中、若しくは半導体の中の電子のスピンの動きを逐一計測するような、そういった非常に速い時間スケールでの計測ができるような装置も使って研究を進めています。" 物質の界面のスピンに関する特異な性質については、理解されていない現象が数多くあります。そういったことがひとつひとつ解明されることによってこれまで知られなかった物理現象の発見や応用が期待できるのです。 Q."磁性体、特にスピントロニクスに関する研究をしています。その中でも我々が注目しているのは、磁性体と他の物質との組み合わせによって新しい性質が出てくるんですね。そういったものを、例えば強誘電体、磁性体、半導体、全てを組み合わせることによって新しいデバイスもしくは新しい素子構造のデザインができるような、そういった研究を進めていきたいと思っています。"